たべものの仕事 #1 品質管理の専門家 藤本恵子さん

たべものの仕事 #1 品質管理の専門家 藤本恵子さん

食品が店頭にデビューするまでの道のりには、実はたくさんのプロフェッショナルが関わっています。
そんな『食のプロ』の皆さんをご紹介します。

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トップバッターは、品質管理の専門家、FOODYELL(フードエール)の藤本恵子さん。
ニッコリーナでは、藤本さんに食品表示(商品の裏面の原材料やアレルギー表示など)が正しく行われているかどうかのチェックや、商品の品質に関する相談に乗っていただくなど品質管理面のサポートをお願いしています。
藤本さんに、お仕事の魅力や裏ばなしをお聞きしました。


 ――(スタッフ)藤本さんは、これまでどんなお仕事を経験されてきたのでしょうか。

藤本(以後敬称略):最初、大学卒業後にしそふりかけの「ゆかり」で有名な三島食品(広島県)に研究員として入社しました。品質管理部門で4年半勤務した後、東京の開発部門に異動になり、最終的に商品開発全体を任されました。外に出たり、現地に足を運んだりするのが好きということもあって、品管から開発部門に行きました。

その後、製造の現場や経験を活かしたいな、と思い、三菱食品へ品質管理として転職し、さらにその後国分(現・国分(こくぶ)グループ)へ転職しました。

――食にかかわる仕事を目指したきっかけや、原体験はありますか?

藤本:高校時代は理数系で、農学部などに興味があったのですが、大学受験がうまくいかず(笑)。もともと食品や家庭科が好きだったので、家政学部で栄養学を学ぶことになりました。

私は山口県出身ですが、実家は祖父母と同居の6人家族で、干し大根や味噌、梅干し、奈良漬けまで手作りしていました。母方の親戚が焼きのりをつくっていて、とれたてのシャコなどをもらっていました。

田植えもしましたし、家の前に畑があって、食卓には旬のものが並ぶ。両親が共働きで、子どものころから料理もよく手伝わされたので、食に恵まれた環境で育ちました。

キャリアの面では、三島食品にいた頃から、ものづくりをする人をサポートしたいと思っていました。開発と品管(攻めと守り)両方を経験したからこそ、自分にできることがあるのではないか?と思うようになりました。

藤本さんのパワーの源。手前がメイちゃん、奥がレンくん


――今のお仕事に至る、ターニングポイントは何でしたか?

藤本:国分にいた頃から、食品に関する講演など単発の仕事で、時々山口へ帰っていたのですが、そのとき山口銀行のグループ会社の方から「地域商社を作りたい」というお話がありまして。ずっと断っていたのですが、今から7年半くらい前、夫が転職して北九州市に引っ越すことになり、それをきっかけに(地域商社に)関わることになりました。

夫は特に九州出身ではないので、転職の話を聞いたときはびっくりしましたが、これもご縁かなと。
それから三年間、山口の地域商社で、食品業界のこと、プライベートブランド(PB)の作り方、食品表示の作成方法など、基本的な知識共有を含めてアドバイザーとして関わりました。

仕事の面では、地域商社の仕事の後、独立したことも大きなターニングポイントだったと思います。

そうそう、独立第一号のお仕事が、ニッコリーナを運営する良品工房さんでした。もともと白田代表とは6年くらい前、一緒に講演のお仕事をさせていただいたご縁でつながりがあったんですが、私が「独立して新しい仕事をスタートします」とSNSに投稿したら、白田代表から「手伝ってほしい」と連絡をいただきまして。

独立後は、小さな事業者さんと関われるようになったことも大きな変化ですね。小さい企業は社長が営業をしていたり、品管の専任者がいなかったり、製造記録がないなど、少し危ういところがあります。もともと、そういうところの支援ができないかなと思っていました。

 

――食のプロ、藤本さんがスーパーで思わず見てしまうのはどういうところか教えてください

藤本:スーパーは大手の商品を扱っているところが多いので、正直、食品表示はあまり見ていません(大手は食品表示の確認体制が確立されていることが多く、間違いが少ないため)。温度帯変更の表示(「温度帯変更者」と記載があるかどうか)や、売り場の展開や陳列の仕方、季節ごとにどんな商品が出ているかなど、自分の勉強のために見ています。

逆に、マルシェや地方の道の駅などは栄養成分表示やアレルギー表示、表記漏れも多いので、つい表示を見てしまいますね。商品の値段も気になるのでチェックします。

 

――仕事のやりがい、わくわくポイントはどんなところですか?

藤本:食品表示チェックは、証明問題を解いているような感覚で、煮詰まったときの気分転換になります。自分も勉強になりますし、ひとつひとつ片付けていく感じが気持ちいいです。

「旅行」と「食べること」が好きなので、ここまで頑張る!と仕事の目標と旅行の計画をどちらも楽しく立てています。仕事も趣味のようなものです(笑)

 
車の走行距離は3年間で約8万㎞。片道200㎞を日帰りすることも! 

――おしごと三種の神器(必須アイテム)を教えてください。

藤本:食品表示チェックに欠かせないのは『食品表示マニュアル』と『日本食品成分表(八訂))』 、消費者庁が出している『加工食品QA』の三つです。『加工食品QA』は印刷すると34センチの厚さになります。

道具という意味では、いろんな場所に出かけて、いろんなところで仕事をするので『車』『ノートパソコン』『スマホ』の三つが必須アイテムです。

 

――ニッコリーナのいいところ、期待することはなんですか?

藤本:食品表示の講演などは、本当に来てほしい事業者さんは来ない…というジレンマもあると思いますが、事業者が外に売っていくことをしっかり意識して、表示のアドバイスされているところがいいなと思います。

期待することは、地方に眠っているいいものをどんどん発信していってもらいたいですね。地方の事業者にとって、東京で販売してもらえることは喜びなので、スポットライトを当てて広げていただけたらと思います。

 

――今後やってみたいことを教えてください

藤本:出かけるのが好きなので、地方に行く仕事ができたらいいなと思っています。

旅行と仕事では、得られるものが違います。仕事で地方(現地)を訪れると、その土地の生産物や、その土地の人の目線で、その土地を知ることができます。会社員時代と比べて、自分のやりたい仕事を広げられるところがいいなと思っています。

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子どものころの豊かな食体験が原点となって、着実にキャリアを積み、いきいきとお仕事をされている藤本さん。

品質管理は表舞台に出ることが少なく、縁の下の力持ちといわれることが多い仕事ですが、商品が市場にデビューするにあたって欠かすことのできない、とても重要な分野です。

藤本さん、いつも本当にありがとうございます。

画像提供:藤本恵子さん

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藤本恵子(ふじもと けいこ) プロフィール

1991年より三島食品株式会社で業務用商品の開発・販売戦略を担当。2010年、三菱食品株式会社にて品質管理の部門責任者及び、関係会社の品質管理センター長を兼任。2015年より国分グループ本社株式会社にてオリジナル商品の開発のMDとして勤務。

2018年、地方銀行グループに転職し地域商社やまぐち()で商品企画や品質管理の部長として勤務。20214月~現在 FOODYELLを設立。商品開発・品質管理のアドバイザー業務を行う。

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